概要
良かれと思ってやったことが悪い結果になったり簡単に元に戻せないことがある。「構造」という考え方。スーザン・ジョージ「なぜ世界の半分が飢えるのか-食糧危機の構造」。”悪者”はでてこない、自由契約と附従契約、不可逆性。
フランス革命の失敗 自由意志→合理的な社会を!→ギロチン政治など逆の結果に。社会は複雑。
グローバル化と国際化の違い。3段階の郊外化。団地化、コンビニ化、ネット化。見たいものだけを見る。
システム世界と生活世界。生活世界のつながりの維持にはコストがかかる。
排外主義の背景にあるのは経済的没落による不全感、経済的不安が予想されることによる不安。ナチス・ドイツの研究で明らか。別の不安を別の不安で埋め合わせようとする。神経症。特に中流が没落するとそうなりやすい。以前より悪化した感。
クレーマーに高齢男性が多い理由。昔は高齢者にポジションがあったが今はほぼない。
中国やアメリカに比べて日本は血縁主義ではなくキリスト教的見られている感もないので、システム世界の過剰流動性に弱い。
コミュニティ(共同体)とアソシエーション(組織集合)の違い、人格性と人為性。シェアハウスは厳しい。感情劣化した人が入ってくると崩壊する。包括できない。矛盾。
性愛の退却、属性主義(スペック)、損得、マッチングアプリの問題。
近代社会が機能する条件。主体性を前提とした感情的能力と統治。ルソー、スミス → マルクス → ウェーバーの流れ。実際は小規模ではなく大規模、直接民主制ではなく間接民主制になった。国民国家は戦争のための枠組み。今は明確な敵がいないので内部で分断。
アメリカの富裕層による市の誕生。自分たちの税を減らし、自分たちに還元。損得。中国の監視社会、信用スコア。
映画「マトリックス」 全てコンピュータによって最適化された世界。サイファーでよくね?と思うかどうか。
秩序のための統治方法。どれもコストが高いが、ディスニーランド化はコストが低い。
新反動主義と加速主義。卓越者たちが世界をデザインし、それ以外は科学とテクノロジーで幸せ状態。アメリカで「洋上入植研究所」が設立し、すでに独立国家のための実証実験が始まっている。
トロッコ問題。功利主義と義務論(カント)。自動運転の設計にもトロッコ問題。阪神大震災にはあった「災害ユートピア」が東日本大震災にはほとんど見られなかった。「われわれ意識」の範囲の変化。地域→家族、個人。
人にはゲノムに基礎づけられた良心みたいなものがある。
テックを使う使わないの二項対立ではなく前提とするしかない(サイエンスは良し悪し関係なく自己増殖する性質をもつ。吉本隆明)
「人間であること」と「人間的であること」の大きな違い。
小さな共同体を作っていくための具体例。食とエネルギー。必要なリーダー像。トップダウンでは皆が皆のために動くか。
感想
まず具体例が出てきて何が問題か考えてみる。その問題を社会システム論、生物学、哲学、心理学、政治学など駆使して紐解いていく。これは確かに表面的には見にくいけど大問題だと思える。そしてどうすればいいかを考えるためのエッセンスまで導いてくれる。
他の著書と被るワードは多いけど、全体が俯瞰でき様々な要素の繋がりを掴める。章の前後にまとめがあったり、野田さんが完結にまとめているのでわかりやすい。宮台さんとしては簡潔にしすぎたようだけど。
分かりやすい”悪者”はいない。どこの企業の社員だって間違ったことをしているように見えない。会社のため同僚のため家族のために一生懸命働いている。それだけではいけないことがよく分かる。
ノスタルジーに浸るのとは違う。人間ではないからと拒否するのではなく、テクノロジーを受け入れて前に進まなければいけない。
落合陽一「機械か人間かなんてどっちでもいいじゃないか!」
何かしらのコミュニティを築こうとするとき、自分のことしか考えないような人が来た場合に短絡的に排除するのはそれはそれで微妙。距離感を保ち力を持たないようにする。その人たちを包括するためにこそコミュニティがあるので、なるべくつながりは断たずどう取り込んでいくか考えていかないといけない。
絆の維持にはコストがかかるものだ、という言葉が心に残った。「あーめんどくせぇ」と自分はよく言ってしまうのでその覚悟を持って「いや、これは必要なコストだ」と思えるのはでかい。
読みやすいのでおすすめです。