書籍紹介 4「14歳からの社会学」(宮台 真司)

概要

社会学の存在意義や「これから社会をどう生きればいいのか」について, 分かりやすい例えと宮台さん自身の経験を元に語った内容.


昔は近所の人の仕事や家族構成を互いに知っていたが今は違う.
”みんな”とは互いの合意と熱心な関わりがある関係性であり, そんな”みんな”の顔が見えなくなった.

尊厳や自己肯定の獲得には”みんな”の存在が必要不可欠であり, ”みんな”がいないと自己肯定が上がらない.
その結果, 承認を極度に求めることや, 遠慮, 無関心によってアダルトチルドレン, 引きこもり, 脱社会的存在に繋がる.

自分の死は他人の死と必ず関連している. 自分の死を受け入れないということは自分の存在を受け入れないということに他ならない.

性体験はできても深い絆で結ばれるような恋愛を経験する人が減ってきた.
ケータイ小説の流行りについて. そこでは関係性は重要ではなく”事件”が起こりさえすればいい. でもそのような幼く貧しい感受性では愛によって永続する関係を続けるのは無理. 現実にはそういった事件は起こらないし, 人のとの深い関係性は日常の関係の積み重ねだから. 登場人物は入れ替え可能な存在(記号)にすぎない.


“意思”の重要性
消極的自由と積極的自由
“やりたい放題”は欲望に支配された不自由の典型. “意思”の自由は欲望に抗うときに生まれる.(カント)
社会学は,「社会の存在 → 人に”光”埋め込まれ(悪を憎み善に向う)→ 意思の自由を発揮→秩序ある社会 → … 」と考える.社会の外側に決まった善悪があるわけではないし, 時代によって善悪は変化する.

“感染動機”(すごい人や存在への憧れ)がもっとも強い内発性であり重要.
理性からくる合理性ではなく「すごい!」と思ってその人のつい真似をしてしまう. これこそが自由に一番近いと考える.

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キーワード:主意主義と主知主義, 消極的自由と積極的自由, 恋愛と性, 生と死, 歴史と未来, カント, ハイデガー, ホッブズ, ロック


感想

「日本人は会社にやりがいを求めすぎ」というところは否定的な気持ち. 確かに現実を知ることやある程度の諦めは必要だけど, 人生の大半は仕事に時間をかけるし, そこに苦労してもやりたいことを組み込みたい. そうじゃないと心の底から頑張れないし新しいものを生み出しにくい. そもそも会社にやりがいを求めていた人は少ないように思う.

そういや同窓会で久しぶりに合った同級生に仕事の話聞いたら, 「まぁまぁ仕事の話は止めようよ」と言われて悲しくなったことを思い出した. 自分の人生の半分を否定しているようで. 何か嫌なことがあったのかもしれないけど.

“意思”は”欲望”に抗ったときに生まれるものとあるけど, 違いがわかりそうでちゃんとわからない. 本能的三大欲求が欲望かな.
意思は無意識の判断であるとすると, それは過去の経験や本能的な判断の結果を即座に意思に反映したものだから, それも欲望と言えそうな. 「自分が楽しければなんでもいいや」ではなく, 「社会はどうあるべきか」とか「善きものが何であるか」を考えてそれに向かっていく意思であれば納得. 利他的か利己的か.


14歳には半分もわからないと思ったけど, 大きなきっかけにはなるはず.
特に恋愛観は14歳にささると思うなぁ.

宮台さんの過去の経験みたいなものはあまり聞いたことがなかったから面白かった.

ともかくいろんなワードが出てきたけど, もっと深くて様々な議論がされててそれが良いとか悪いとか, それはもう古い今はこれ, とかいう話があると思うので少しずつ理解していきたい.

こういう会話できる人って少ないよね. みんなそれぞれの幸せを実現するために行動しているはずなのに, 大半の人は幸せって言葉に胡散臭さとか嫌悪感を感じてしまう. 特にテクノロジーに盲信している人とか.
なので次に読んでいるのは, テクノロジー側の神成淳司さんと社会学側の宮台さんの対談の本.


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