書籍紹介 2「成長から成熟へ」(天野 祐吉)

いい製品とは何かを調べていたらこの本について紹介されていたので買ってみた

概要

広告という窓から60年間見てきた大量消費社会の影の部分について

計画的廃品化 電球の寿命は1000時間として計画的に壊れるように作られていた

1900年のパリ万博 大量の工業製品

フォードの創始者ヘンリー・フォードのクルマに対するの考え方
「私たちは大衆のためにクルマを作ります ・・・ 誰もが手にいれられるよう低価格を実現しました」
移動手段としてのクルマであって. スタイルや色には関心がなく否定的だった
とにかく技術者としていいクルマが作りたかった

デザインを重視したGMが売上を伸ばす
「技術者が作りたいクルマではなく, 消費者がほしいクルマを作ることだ.」(欲望を掻き立てることだ)

つくるのが易しく売るのが困難になってくるにしたがって形や色彩が重視される
必要のためのクルマから欲望のためのクルマへ

広告は多くの人に今持っているものに錯覚を提供し, 不満を抱かせることだ
大部分のデザインの変化は美的にあるいは機能的に改善するのではなく, それを廃品化するためにされる

VWの広告は素晴らしい アメリカのクルマの大型化・デラックス化に対する批判性

関連映画

  • セールスマンの死
  • グレンギャリー・グレン・ロス
  • 摩天楼を夢みて

物理学者デニス・ガボール
成長社会は否応なく成熟社会へ移行していく
「成熟社会とは, 人口及び物質的消費の成長はあきらめても, 生活の質を成長させることはあきらめない世界であり・・・」
(1972年)

GDPと幸福度は反比例の関係

お金を儲け組織が大きくなるにつれて企業は, 世間の人間を数字とかお金としか見なくなっていく


感想

色々な広告が紹介されていたが, 中でもVWの広告「This we change This we don’t」がとても気に入った.
「中身が変わってます. 外観は変わってません」という宣伝を, クルマのボディとフレームを用いてシンプルにわかりやすく表現している.

現在においても, 見た目が少し変わっているだけでどの機能や仕様が変わったのかわからない新製品をよく目にする.

2年ほど前, デザインとは何かを考えていて一つの答えとして ”機能としての形態” にたどり着いた.
例えばクルマ. 男が思うカッコいいデザインは単純に言うと 速そう と 強そう の2種類に大別されると思う.
重心低く車幅が広くて流線型なボディは機能として実際に速さに繋がる. 重くてゴツいボディ・タイヤは見た目の通り堅牢.
かわいい は ”機能としての形態” ではなく, ”イメージのための形態” とでも言えそうか.

以前は革製品が好きで買い揃えたり工作していたこともあったけど, 機能とデザインについて考えるようになってからは買わなくなった.
科学が発達していない頃はとても丈夫な生地として貴重だったからこそ価値があって, 今の時代においてはそんなことないなと思ったから.
手の脂で表情が変わっていくので愛着が湧くというメリットはある. でもこの愛着から来る幸せな気分も大事な気がする.

日産センチュリーのシート生地は皮革ではなく, ファブリックだ.
皮革は高級感はあるけど, 冬は冷たい夏は蒸れる滑るといったようにデメリットが多い.
”イメージ” ではなく ”機能” としての価値に重点を置いているといえる.

デザインに何を求めるのかについては個人の自由なのかもしれないが
自分はモノのデザインとして ”機能としての形態” か ”イメージのための形態” どちらかと聞かれれば, 前者を重要視すべきだ考えている.
モノを買うとき, そのモノを道具として何かしたいとき, それを成し得るのは機能に他ならないないから.

フォード創業者のヘンリー・フォードさんとVWの感覚と自分の価値観は同じに思えるしこのように考えることができる人が増えたら良いなと思う.

製品の装飾的なデザインやイメージに左右されず, 買う目的とそれを果たすかどうかちゃんと見定める消費者の目が養われれば日本の技術力は上がっていくような気がした. イメージは販売促進はできるけど新たな市場を生み出すのはいつも技術革新によるものだと思う.

天野さんは人間味にあふれている人だ.
講演会などに参加してみたかったな.


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